読書感想「冷たい密室と博士たち」・・・

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)


S&Mシリーズの2作目。
すべてがFになる」の衝撃度はないが、個人的にこちらのほうが論理的思考がなされている気がする。
前回でもそうだったけど、この作品の特徴でもある考えさせる“動機”というものが面白い。
ミステリィは必ず誰もが納得する!?動機がある。
そこに読者がどうして?って感じさせる部分を含ませて答えを読者に考えさせる(推測させる)ような感じになっている。
トリックに関しては結構理解し安い感じだったけど・・・やっぱ動機だよなぁ。
被害者の珠子ちゃんが不憫すぎる・・・
相変わらず犀川先生はクールというか関心を持たないというか。
その割にはかなり煮詰めた解答を用意してるからたちが悪い(笑)
この作品って固定概念を取っ払えるかって結構重要視しているよね?
密室だったって、そんなものは起こりえないという風に前提をぶち壊す。
しかも理論的になりえる風に考えていき、事件を解決。
昔のミステリィってなんか証拠があってそれを超能力的ひらめきによって解いたりするけど、そういった点が少ない。
必ず理由をちゃんとつけて、まさしく数学の問題を解いているかのごとく解決(解答)をしていく。
素敵です。
一つの疑問としては理系の自分の周りにはここまで理系な考えな人はほんの一握りですよ?
こんな猛者そんなにいなくない?
ってか回転が速すぎる!!
うちにもわけてくれー!!


☆気に入った台詞☆
犀川は、自分の授業でも試験は一切しない。問題を解くことがその人間の能力ではない。
人間の本当の能力とは、問題を作ること。何が問題なのかを発見することだ。
したがって、試験で問題を出すという行為は、解答者を試すものではない。試験で問われているのは、問題提出者のほうである゛


「なんか、国の税金を無駄遣いしているみたい」
萌絵は微笑んだ。
「でも、面白そうね。」
「そう・・・・・・」
犀川はポケットに手を突っ込んでいる。
「面白ければ良いんだ。面白ければ、無駄遣いではない。子供の砂遊びと同じだよ。面白くなかったら、誰が研究なんてするもんか」


人間だけが、太古からの「生」にかかわらない欲望を持つ。
(しかし、高等動物の人間だけが殺し合うではないか・・・)
犀川は自問する。
(それは、人間だけが、生命に直接関係のない行為に価値を見出すからだ)


「責任と責任感の違いがわかるかい?」しばらくして、犀川が言う。
「字数が違うわ」萌絵は咄嗟に冗談を言った。
犀川は笑わない。
「押しつけられたものか、そうでないかの違いだ」


犀川先生なら、どう答えられますか?」国枝桃子が無表情で尋ねた。「学生が、数学の何の役に立つのか、ときいてきたら」
「何故、役に立たなくちゃあいけないのかって、きき返す」犀川はすぐに答えた。「だいたい、役立たないものの方がたのしいじゃないか。音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。人間だけが役に立たないことを考えるんですからね」



今日の独り言
「「愛知万博を成功させよう!」のコピーは、「このままでは失敗だ」という意味にしかとれない。 」