読書感想「笑わない数学者」・・・

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)


森博嗣のS&Mシリーズ第3作目。
並列で読んでたので、なかなか読み終えることが出来なかったけど、旅行中に読破。


偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ッ星館」にて開かれたパーティに招かれた犀川助教授と萌絵が巻き込まれる不可思議事件。
オリオン像が消失するトリックと不可思議な殺人事件の謎を解いていきます。
なんかもうこうなってくるとミステリー系は全部そうだけど、呪われてるよね?
そんなしょっちゅう殺人事件に遭遇してたら論文なんて書いてらんねーよ。


まあ、今回のトリックは、なんとなく途中からうっすら予想できた。
ってか、オリオン像の消失なんかはそれくらいしかありえないし。
ただ、殺人事件のトリックのほうはわかんなかったなぁ。
やっぱ小説と漫画だとシチュエーションに若干ブレがあって勘違いが生じるね。


この巻で犀川と萌絵との関係をはっきりさせないと・・・みたいな流れをいっそう強めたけど、犀川が萌絵に対して、今後示すのだろうか?
個人的には身の振りをハッキリさせてほしくないなぁ。
微妙な関係だから安定していると思うし。
最終巻でもこのままでいて欲しい。


天才数学者の台詞が結構好きだなぁ。
さすが書き手は理系だけあって理系の思考をトレースしてるって感じがする。
”犯人は不定”なんていわれたら普通ははぁ?って感じだよねー。
それになるほどって言える人はもう典型的理系人間?
犀川の”自分の予想を裏切って欲しかった”っていう気持ちもなんとなくわかるなぁ。
憧れの人は天井が見えないくらい高いとこにいて欲しいもんなぁ。
次は「詩的私的ジャック」。
タイトルだけだとどんな話がわからないからわくわくだな!!



気に入った台詞
「理学部と工学部は、虚学と実学だってよく言うけどね。なんてったって、楽しいのは虚学のほうだものね」


「一番、下品な格言って知ってる?」
「働かざるもの食うべからず、ですね?」萌絵は即答する。
「そうだ」犀川はにっこりと頷いた。彼は機嫌が良さそうだ。
「いやらしい、卑屈な言葉だよね・・・。僕の一番嫌いな言葉だ、もともとは、もっと高尚な意味だったんだよ」
「え?どんな?」
「一日作さざれば、一日食わず」
「それ、同じじゃありませんか?」
「違うね。これも集合論だ。ド・モルガンの法則かな」


「数学が何の役に立つんです?」天王寺俊一がぶっきらぼうな口調で言う。
「一度、きいてみたかったんですけどね」
「その質問をお前は以前に一度している」低い声が答えた。
「鶯の美しい声に、何の意味があろう? 森へ行ってきてきいてみるがよい。
何のためにお前たちは鳴くのかと。なんの役に立つのか、とな。
すべての美は、それを尋ねる者には、役に立たぬものだ。
では、哲学者は何の役に立った?存在の複雑さをベクトルのようなものに置き換えて何になる?
心理学者は何の役に立ったかな?解放と処方を入れ替えて、絶叫と抑制の多三角の頂点を一つ移動したに過ぎないではないか。
物理学者は、世界中の金を集め、統合というただ一つのマジックさえまだ完成させていない。
宗教家、それに政治家はどうだ?戦争が終わらないように敗者を援助する、いやそう言って握手だけの約束をする。
誰が何の役に立った?一人でもよい、役に立った者を思い浮かべてみたまえ。
よいか・・・、少なくとも数学者だけは、自分たちが役に立つなどと決して言わなかった。
何故なら、それが我々の唯一の真理であり、名誉なのだ」


「人類の文明は僅かに数千年だ。史上最大のトリックとは何かな?」
博士の問いに、誰も答えない。
「これで、今夜はお別れだ。また、明晩、会おう」スピーカから声が響く。
人類史上最大のトリック・・・?
(それは、人々に神がいると信じさせたことだ)
犀川は思った。


「西之園君。内側と外側の違いは何かわかる?」
「平面なら・・・、閉曲線の面積が小さい側が内側です」萌絵は答えた。
「でも、一般的には、観測者の存在する側が内側かな・・・」


「どんな斬新な思想も、どんな先進の才能も、最後は防御にまわるものだ」
「防御ですか?」
「ああ、純粋に攻撃的な行為、戦争や殺人でさえ、最後は防御になる」


<十万桁まで計算されたパイに人間性がないというのですか? 人間以外に誰がします?>



「今日の独り言」
化物語のアニメ化をシャフトが?最強の布陣だな!! まるで哀川潤のようだ」