読書感想「詩的私的ジャック」・・・

詩的私的ジャック (講談社文庫)

詩的私的ジャック (講談社文庫)


森博嗣のS&Mシリーズ第4作目。
今までは基本的に主役の犀川と萌絵がなんだかんだと事件にかかわっていくのだが、今回は犀川が国際会議にて中国に行ってしまい、半分くらいでてきません。
今作でわかったことは犀川と萌絵のトークがないと寂しいってことですね。
彼らの絡みがないと作品にアクセントがかからない!!
特に犀川は非常に重要な人物だぜ!!


最後の解説で書いてあったが、犀川は殺人事件の真相にはあまり興味がなく、それよりも面白い謎に興味を引かれる。
探偵役の人物がそれでいいのかって感じですが、そこが新鮮ですね!
笑わない数学者での
『しかし、どちらかというと、僕には、事件より、オリオン像の方が不可能な謎に見えますね。
 事件が解決しても、博士のあの問題を解くことは出来ないかもしれません。
 問題のレベルは、あちらの方が明らかに上です。』の台詞に伺えます。
そこにお嬢様・萌絵が犀川を事件に無理やり(むしろ強制的?)に事件の情報を流したり、刑事さんを紹介したりして巻き込んでいきます(さすが警視庁を叔父に持つお嬢)。
そして物語が成り立って、犀川はいやいやでも事件の真相をつかんでいく。
ミステリーとしてはかなりの異色ですね。


今回の密室についてはかなり微妙な感じだったけど、最後に萌絵が犀川に言った
『一つは、私が大学院にいる間は、絶対、転勤しちゃ駄目
 ・・・
 もう一つは、絶対、私以外の人と結婚しないでください』
って台詞に今後期待!!
どうする、どうする犀川!!
それに対する犀川が思った
『たった今、君が突然言い出した、押しつけがましいお願いが、希望で……
 僕がそれを断った、言葉では説明できない曖昧な理由……、それが夢だ』
が結構好きですよ?
今後もこの二人には目が話せない!!


お気に入りの台詞
「衣・食・住の三つのうち、食はちょっと特別だけど、衣と住は、どう区別できる?答えられる人はいますか?」


「どうもね、その密室というものを、小説で読んだことがまだないものですから、僕にはイメージが捉えられないんですよ。
 ミステリィではどういった定義なのでしょうね。
 だって、本当に密室で殺人が起きたら、犯人はすぐ捕まりますよね。
 部屋からでられないんですから……。
 それが密室でしょう?だからつまり、殺人が起きたときは密室ではなくて、後で密室になるわけですね。
 ということは、密室殺人、じゃなくて、密室前殺人ですね、正確には…。違いますか?」
………
「それに、人物大の物質に関する密室、細菌大の物質に関する密室、期待に対する密室、電磁波に対する密室、なども定義する必要があります。
 外部からいかなる影響も受けない部屋を作ることは、たぶん不可能です。」


「一番のポイントはね、何のためにそんな密室を作ったかだ。HowよりもWhyだ」


“花が枯れても、人は泣かない。花はまた咲くからか。いや、人間だってまた生まれる。
 失われるのは、躰ではない。死んだ者の記憶だ。
 だが、記憶でさえ電子的に保存することができる。再生できないのは、人間の思考だ。
 思考だけが今の技術では再現できない。”


「西之園君、底なし沼と普通の沼はどう違う?」
「底がないか、あるかですか?」
「底がない沼なんてない」犀川は言った。「僕の言っている意味がわかる?」
「わかりません」
「ようは、人間の幻想の有無なんだ」


「君は、鶏と卵はどっちがさきだと思う?」
「そりゃ、科学的に考えて、卵です」
「僕は鶏がさきだと思うね」
「またぁ……。何かのジョークですよね?」萌絵は車を出しながら言った。
「いや……、意志の問題だよ。鶏になりたい、という意志が最初の遺伝子にあった。だから、鶏がさきだ」
「変な理屈…」



今日の独り言
「戦場ヶ原の声に一番あってるのは伊藤静香だと私は思うんだが・・・」