読書感想「黒猫の三角」・・・

最近「絶対安全」の定義が何だったかわからないことに気づいた。
確かこんなんだろうなぁってのはあるんだけど、細かいところが知りたい。


森博嗣のVシリーズの第1作目。
S&Mシリーズ1作目「すべてがFになる」が衝撃的な内容であったように、こちらもかなり衝撃的結末だった。
ただ、事件を推理して解いた人は結構いたんじゃないかな?
だから犯人は○○だ、あれちょっと待て・・・???
ってな感じに陥った人が結構いそう。
相変わらずこの人の作品はミステリーとは違ったものを放っている。
復讐や嫉妬からの殺人で安心できる?
むしろなぜ殺したって思うほうが安心できない?
どちらが人間的?自分に近い?
もしあなたなら同じことをしたんじゃない?
などなど、考えれば考えるほどわからなくなるようなことがどっさり。
だが、自分的にはそれでいい。
それだからこそ面白いと思える。
素敵な作品です。



作中に出てくる黒猫・デルタの名の由来が理系なのにわからなかった。
ってかあれにそんな名前がついてたんかい!!
今回はこっちのほうがある意味ミステリーだったのでは?


前回のシリーズよりも今回のシリーズのほうがキャラが個性的ですな。
女装趣味の武道派美少女系男子!?・小鳥遊練無に関西弁のぶっとび(一部紫木一姫仕様、あれ、“紫”が一緒だ)系女子学生・香具山紫子、肩書き複数所有の探偵・保呂草潤平に、1児の母のCPU等開発・研究美人学者・瀬在丸紅子
なんだかようわからん。
個人的には香具山紫子がお気に入り。
ノリが葵井巫女子に似ている(語録は作らないが)。
これを読んでわかったことは、ノリノリのキャラがいても受けがいなければハイテンションな展開にはならないことだな。
あとは紅子の息子のへっ君がかわいい。
牛乳とコーンフレークが一番好きで幸せって。
もっといろいろ食べさせてあげてー!!
貧乏は敵だー!!



まあ、Vシリーズすべてを読むかどうかはともかく、この1巻だけでも読むと面白いと思う作品でしたね。



お気に入りの台詞
紅「美容とか健康とかなら、何もだべないで点滴うっているのが一番良いんだよ。
  消化は無駄。そうだ、味覚ほど不思議なものはないな。
  どうして、食べ過ぎたり飲み過ぎたり、自分の躰に悪い塩分や脂肪を美味しい美味しいと取り過ぎてしまうんだろう?
  間違いなく、生きるための障害になっている。不思議だな……。これ、そもそも味覚が麻痺しているのだろうか?」
機「おそらく、子供の頃には必要だったのでしょう」


機「遊びで人を殺している、とおっしゃるのですか?」
紅「遊びで殺すのが一番健全だぞ」
紅「仕事で殺すとか、勉強のために殺すとか、病気を治すために殺すとか、
  腹が減っていたから殺すとか、そういう理由よりはずっと普通だ」


紫「ええ、考えておきます」
 それは関西では「あきまへんな」と同義語だ。


紅「理由は必ずある」
紅「ただし、その理由が、言語として他人に伝達可能かどうか、
  あるいは、たとえ伝達可能であっても、他人の共感を得られるかどうか、という問題が残るだけなの」


練「ね、どうして、不自由っていうのかな?」
紫「何ゆうてんの、君」
練「どうして、非自由じゃないんだろう」
練「名詞なら、不、じゃなくて、非、がつくはずでしょう?自由って、最初は動詞だったのかな」
  ・・・・・・
紫「うーん。ま、私の解釈としては……」
紫「きっと、昔の日本にはなかった言葉なんよ、自由って。だから、使い方がようわからんうちに、広まってしもうたん」


保「人を殺すには、それなりの理由がある、我慢が出来ない欲求なのだ、という幻想を社会は勝手に作り上げています。
  これは、とても興味深いシステムです。なんだって、そんな不思議なルールを考えついたのでしょうね」
紅「理由もなく殺されたら、困るからだわ」
保「でも、たとえ理由があっても、殺されたら、困るでしょう?」


紅「理屈を求めることが、あるときは、思考を狭めるのよ」
紅「最先端の自由な発想とは、理由も、言葉も、理論も、まだないところへ飛ぶことなの。
  そこへ飛躍できた人だけが、そのインスピレーションを掴むことができる。
  それを凡人が、あとから丁寧に理由をつけて、そこまで行ける道を作るわけ」




今日の独り言
「安全の否定語は非安全?未安全?不安全?」