読書感想「人形式モナリザ」・・・

今年のF1はなんてこったい!!って感じの劇的な幕切れだったけど、来年はエンジン問題なんかがあるから大変だな。


人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

前から思ってたけど、タイトルがネタバレ気味なのに、それに気づけないのはなんでだろう?
たぶん楽しむことを前提にして読んでるからだなぁ。


今回の話は卒業旅行で行った長野県の蓼科での事件。
まず、最初のプロローグの事件については誰が犯人かはわかった。
まあ、なんとなくですが。
この作品はおそらくS&Mシリーズで位置づけるなら「笑わない数学者」に該当するかな。
前回同様マトリックス=子宮ということがキーになってくる話。
解説に書いてあるように事件の真相は比較的わかりやすい。
ってかそれ以外には不可能な作品。
だが、最後の一言があれ?って思わせる。
この一言を考えて最初を読み直すと何となく事件の全貌が見えてくる。(気がする)


この話でかなりキャラの個性が自分の中で固まった印象を受けた。
ただ、相変わらず森節を利かせたキャラだな、保呂草(笑)
そして新キャラ祖父江七夏。
紅子の元夫・林の愛人とのことで。
紅子と林との間にへっ君がいたら、林と七夏との間には娘が。
どんな修羅場やねん!!
いや、まあ別れてるから問題ないと言えばないが。
ここで林に対して印象がかなり変わった人がいるんだろうな。
あー、Vシリーズ最大の秘密を事前に知ってしまったからこの部分が非常に残念だ。
伏線が出てきてるのに、「あー、なるほどね」って冷めた感じで読んでしまう。
もし知らなかったら、最後で絶叫しているのに。


いろいろな感想を読んでみるとこの作品が好きな人はかなり多い。
完成度が高いというか、よくまとまっている。
人間と人形との関連性についてもよくまとまっていて面白い。
やっぱこの人のすごさがわかる作品ですな。



お気に入りの台詞
保「人は、生きている他人を見て『生』を感じる機会は少ない。それなのに、人形にそれを見る。」


現在、最高の人形とはコンピュータである。人に最も近い機械だからだ。
人を真似ることが、この機械を作りだしたのだから、当然である。


紫「ようするに、悪魔だの亡霊だのってのは、人形みたいなもんで、後ろに必ず操ってる人間がおるんよ。
  それが見えんようになってしまういうのが、つまり宗教やん。
  あるいは、教祖様みたいに自分を人形と化して、誰かに操られているような振りを
  したりもしちゃうわけだよ。あ、舌噛んだ」


練「眠いんじゃないかな」
紫「夢心地なんよ」
練「イタチごっこ?」
紫「新しい耳、買うてきい」


保「所有したい、よりも、知りたい、の方がより人間的だ」


岩「何かを恐れていたい、何かを恐れていれば、それよりも恐ろしい状態にならない。
  どこか痛いところがあれば、他に痛いところを忘れることができる。
  あらゆる原始宗教の起源が、そこにある。だから、恐ろしい恐ろしいと祈り願って、
  人々の恐れを人の形に閉じ込めた。人の形ほど恐いものはない。
  どんな形よりも恐い。それを創ったからこそ、自らへ向けられる恐怖に、人間は耐えられる。
  鏡を見続けることができる動物は人間しかいない。
  自分の形が恐ろしいことを、呪文によって封印したのです」
紅「その呪文が、人形ですか?」
岩「悪魔か、あるいは神様か」


紫「あのねあのね、できできのほやたての新しい遊園地なんよ。あのあのあの、ほら、ガンマン。
  二酸化ガンマン。そりゃ、君、マンガンやろ!すいまシェーン・カン・バーク」
練「寒いなあ」


紅「自分の内の意志を忘却し、消去して、外側に虚構の意志を造りあげる。
  保呂草さんの言ったとおり、これがすべての宗教の基本原理かもしれない。
  そう信じることで自分を保持する。自分を生かす。そうしないと、保持できない。
  生きていけない。それが人間の脆弱さであり、柔軟さでもある」


紅「人を殺したら、罰せられる。そのルールがすべてです。
  それ以外には、何一つ有効なものはありません」
紅「それ以外に、私たちには共通の認識はない。だからこそ、それだけを定めた。
  つまり、値段を決めるみたいに、交換レートを定めただけなの。
  良いことか、悪いことか、それさえもまだ人間は分かっていない。
  ただ、ひとまず、殺人は懲役何年かと交換される、というルール、交換レートが決まっているだけです」



今日の独り言
「今日西武が勝ったらたぶん優勝は西武だな。」